工業用温度計には、測定原理や用途の異なるさまざまな種類があります。本記事では、代表的な5種類の特徴と動作原理を紹介します。
1. ガラス温度計
ガラス温度計は構造が簡単で、比較的低コストです。日常用途だけでなく、化学実験や各種産業用途でも広く使用されています。一方で破損しやすく、読み取り角度によって視差が生じるため、取り扱いと目盛の読み方に注意が必要です。代表的な測定範囲は-60~200℃です。
動作原理:


ガラス毛細管と感温部(球部)には測温液が封入されています。温度変化に伴う液体の熱膨張・収縮を、毛細管内の液柱の変化として読み取ります。
2. バイメタル温度計
バイメタル温度計は電源を必要とせず、堅牢な構造で屋外や一般産業用途に適しています。感温部が測定対象と熱平衡に達するまで時間を要するため、応答は比較的緩やかです。ステンレス鋼製の製品は、さまざまな設置環境で使用できます。代表的な測定範囲は-70~600℃です。
動作原理


熱膨張係数の異なる2種類の金属板を接合し、らせん状に成形したバイメタルを感温素子として使用します。一端を固定し、もう一端を指針機構に接続することで、温度変化によるバイメタルの変形を指針の回転に変換します。
3. ガス封入式温度計
ガス封入式温度計は、毛細管を用いることで測定場所から離れた位置に表示部を設置でき、製品仕様によっては最大約60 mの遠隔指示に対応します。周囲温度の影響を受けるため、設置条件によって指示誤差や指針の変動が生じることがあります。代表的な測定範囲は-200~700℃です。
動作原理


感温部、毛細管、ブルドン管からなる密閉系にガスを封入します。温度変化によって封入ガスの圧力が変化すると、ブルドン管が変位し、その動きを指針へ伝えて温度を表示します。
4. 熱電対式温度計
熱電対式温度計は測定範囲が広く、応答性にも優れるため、産業用温度計測や自動制御で広く使用されています。微小な熱起電力を扱うため、補償導線、基準接点補償、ノイズ対策が必要です。腐食や摩耗のある環境では、素線を保護するための保護管を使用します。代表的な測定範囲は-200~2500℃ですが、実際の使用可能温度は熱電対の種類と保護管材料によって異なります。
動作原理

熱電対は、異なる2種類の金属導体を接合した測温接点と基準接点の温度差によって生じる熱起電力(ゼーベック効果)を測定して温度を求めます。発生する熱起電力と温度の関係は、使用する金属の組み合わせによって異なります。実際の計測では、基準接点補償(冷接点補償)を用いて測温接点の温度を算出します。
5. 測温抵抗体(RTD)
測温抵抗体(RTD)は、高精度、高い安定性、優れた再現性を備え、金属加工、電力、精製をはじめとする幅広い産業分野で使用されています。使用環境に応じて、素子および保護管の材質、耐振動性、耐食性を確認することが重要です。代表的な測定範囲は-200~600℃です。
動作原理

測温抵抗体(RTD)は、金属導体の電気抵抗が温度に応じて変化する性質を利用して温度を測定します。高精度と安定性が求められる用途に適しており、一般には耐食性・耐酸化性と長期安定性に優れる白金(Pt)が使用されます。なかでもPt100が広く採用されています。
5種類の工業用温度計の特徴と原理を整理しました。用途、測定範囲、精度、応答性、設置条件を比較し、適切な方式を選定してください。温度計の選定については、以下の関連記事もご覧ください。




